家具のリフォームブログ
思い出のテーブル M様邸
M様からの最初のご依頼は「家族との思い出でもある傷を生かしたまま、テーブルをきれいにしてほしい」ということでした。
お子様たちが独立されてご夫婦2人になったのを機にテーブルを修理したいが、お子様たちがつけた傷も思い出なので残したい、とお話しくださいました。
お打ち合わせを重ねた結果、最終的には「全部きれいにしましょう!」ということになりましたが、ご家族とともに過ごしてきた弊社のテーブルを大切にしてくださっていることが伝わってきました。
天板突板補修
テーブルを再度塗装する際は、準備工程がいくつかあります。
古い天板は表面の突板が浮き上がり、凸凹になっています。そのため、天板面をカッターと接着剤で平らにしていきます。
※カッターでテーブルを傷つける理由は以前のテーブル塗装(前編)突板補修でご覧いただけます。
天板研磨
天板突板の浮き修理が完了した後は、古い塗装を剥がします。
天板など平らな面は、機械で高速回転する研磨材を押し当てることで、塗装を剥がすことができます。
塗装を剥がす上で大変なのは、天縁と呼ばれるテーブル側面部分です。面が平らではなく斜めになっていたり、入隅になっているため、機械では磨くことができず手作業になります。以前は右写真のように紙やすりを折り込んで磨いていましたが、力が入らず磨くのに苦慮していました。
その様子を見ていた湯来工場のスタッフが、「これを使ってみたら」と側面を研磨するのに丁度よい道具を作ってくれたそうです。先端部分が絶妙に天縁の形に添うようになっており、手で磨くよりも圧倒的に作業効率が上がったそうです。
弊社では主に、新しい家具を製造する「湯来工場(広島県)」と、修理を中心に行う「坂東工場(茨城県)」がありますが、定期的に湯来工場のスタッフが坂東工場に来て意見交換や技術指導などを行い、日々技術向上に努めています。
天板塗装
テーブルの塗装は1度塗装を施して終わりではなく、塗料の種類を変えながら何度も塗り重ねていきます。
01:既存の状態
02:天板研磨
上記でご紹介した天板研磨により古い塗装を剥がした状態です。
03:目止め塗装
木には導管と呼ばれる水の通り道があります。導管を埋めないと塗料が導管を通り抜けてしまいます。そのため、仕上げの塗料を塗る前に粘着性の高い塗料を塗り、導管を埋める作業(目止め)を行います。
04:塗り作業
何度も塗料を塗り重ねて層を作ることで、徐々に天板の凹凸が平らになっていきます。
05:上塗り作業
地中海、ブリティッシュコレクションなど弊社はシリーズによっても塗料の色が異なります。それぞれのシリーズに合わせて塗装していきます。
06:仕上げクリア塗装
最後に天板を保護するクリア塗装を施して作業完了です。
完成
凸凹だった表面も平らで滑らかに仕上がりました。
M様は「マルニ木工のテーブルは思い出の品だ」とおっしゃってくださいました。
何十年後かに「あの子が結婚した時に、このテーブルを直したね」と、弊社の家具が思い出話をする新たなきっかけになればいいな、と思います。
おまけ
余談ですが、「面白いもの見せてあげる」と工場スタッフから声を掛けられ見に行くと、木と木が現在ではあまり使われなくなった技法で接合されていました。各工場によって呼び方は色々あると思いますが、弊社工場では接合部分の形状から「おしゃぶり」というユニークな名前で呼ばれています。当時の家具職人たちの間では「ここは、おしゃぶりを入れておくか」なんて会話がされていたそうです。
「おしゃぶり」と「フィンガージョイント」
弊社が呼ぶ「おしゃぶり」とは、ビスを利用して接合部が開かないようにする方法です。
木部接合部に絡ませるようにビスを打ち、接合部が開きそうになるとビスの頭同士が引っかかり、それ以上開くのを防ぎます。
※実際には木部を欠き込んでビスを打ち込み、最後は樹脂で穴を埋めます。
現在の天縁の繋ぎ目部分では、フィンガージョイントと呼ばれる接合方法が多用されています。(一部商品では「おしゃぶり」も残っています)