2023年10月13日

nextmaruni AZUMIチェア 張替え Yさん邸

マルニ木工には2005年に発表した「nextmaruni」というシリーズがあります。
弊社を代表する「MARUNI COLLECTION」もこのシリーズが無ければ生まれなかった、マルニ木工にとっては分岐点のようなシリーズです。

今回、弊社社員Yさんより自宅で使用していたnextmaruniのAZUMIチェアの修理について相談がありました。椅子の張地が汚れてきたので、張替えをしたいとのことでした。

見た目は非常にシンプルですが、革の下の薄い座面には3層のクッション材が使用されており、座り心地を考えた複雑なつくりになっています。

本体の木枠を除くと12ものパーツで構成されており、仕上がりと座り心地を考えて硬さの異なるクッション材を使い分けています。

①座板: 
座面を支える部分です。

②パロニア:
緩衝性に優れたポリプロピレン製のシートです。

③チップ#7000:
密度も高く耐久性にも優れたリサイクルされたウレタンです。

④ゴムスポ:
原料のゴムに発泡剤などを混ぜて膨らませたもので、軽量でクッション性があります。

⑤⑥メジトップTK: 
板状のゴムです。

⑦⑩革:
今回elmosoftという本革を使用しています。革の豊かな表情を生かし、表面を削り取らずに使用したフルグレインレザーです。染料で革を染めた後に顔料でごく薄くコーティングしたセミアニリン仕上げで、汚れや色移りへの耐性とナチュラルな風合いを持ち合わせたソフトな手触りが特徴です。

⑧エフトロン:
優れたクッション性と耐久性のある低発泡のポリエチレン製シートです。

⑨⑪両面シート:
両面テープです。

⑫ナイロンフレンジ:
フェルト状の生地です。

下地が悪いと表面が凸凹になってしまいます。そのためフレームに古いウレタンなどが残らないよう剥がす必要があります。

丁寧に剥がし終えたら、新たなウレタンを始めとするクッション材と革を張っていきます。

このチェアは張地である革と木枠の一体感が非常に大切で、それが座り心地や見た目の美しさにもつながっています。

そのため、スタッフが一番難しかったと話していたのが仕上げの本革を張る作業でした。
スマートフォンの保護シール同様に隙間にゴミや空気が入らないよう、且つ、中心から革を調整しながら張るため非常に気を使ったそうです。
スマートフォンは平らですが、この椅子の場合「くの字」に折れ曲がっているので、より難しいであろうことが想像できます。
また革は引っ張ると伸びることを想定して、少し小さめにカットされているのですが、端の部分だけ伸ばすと、椅子の端がよれてしまうため中心から均等に伸ばしながら、且つ木枠との一体感が出るように張っていく必要があります。

綺麗に修理された椅子がYさんの家に無事に届きました。
最後にYさんには、修理を検討されるお客様とのやり取りを参考に用意したQAに答えて貰いました。

Q1:購入時期はいつ頃ですか
2006年頃

Q2:修理しようと思ったきっかけはありますか
元々綺麗な白革でしたが、かなり汚れが目立ってきたので。

Q3:修理を依頼する際に悩んだり、不安なことはありましたか
既に廃番になっている商品であること、複雑な形状で当時も座面を張るのに苦労していた記憶があり、綺麗に修復できるか少し心配していました。

Q4:生地選びに迷いはありましたか
また革張りにすることは決めていましたが、色は白ではなく黒か茶色で悩みました。

Q5:張替え修理後の椅子はいかがでしたか
やはりマルニ木工の技術は素晴らしいと思いました。買った時のように見事に綺麗になり、内部のウレタンなども変えていただいたので座り心地も格段に良くなりました。

Q6:実際に家具をリフォームして感じたことはありますか
家具は直すことで、長く愛着を持って使い続けられます。家具を捨てることも大変な現在、世代を超えて継承していくという文化がもっと日本に広がってくれれば良いなと思います。

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弊社としては新たな試みだった「nextmaruni」も発売からすでに15年以上経ちます。
今までトラディショナルな家具のお修理がほとんどでしたが、今回ご紹介したような「nextmaruni」や「MARUNI COLLECTION」シリーズなど、スタンダードな家具のご依頼も少しずつ増えてきました。
家具によってデザインは全く異なりますが、どの家具であっても「直して使い続けたい」と思っていただけることは大変ありがたいです。
今回の記事も少しでも皆様の参考になれば嬉しく思います。

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