2024年9月13日

No.82 スターチェア張替え F様邸

「この椅子ほしい…」
私が初めて拝見した時、思わずそう思ったこの家具は、65年前にF様のおばあさまが購入された「No.82 スターチェア」という弊社の古い家具です。

F様が譲り受けて修理をご検討されていたところ、F様の職場が弊社直営店 maruni tokyoのある東日本橋エリアに移転し、たまたまmaruni tokyoの前を通りかかったことがきっかけで、ご修理のご相談をいただきました。

生地を剥がして驚いたのは、クッション材として藁が使用されていたことです。
現在では椅子の座面用に藁を販売しているところはなく、ウレタンというクッション材の使用が一般的です。
弊社でも藁での対応はできなかったため、現在使用しているウレタンを使ってなるべくお客様が当初ご利用いただいていた形、硬さになるよう試行錯誤を重ねました。
昔の家具は現在使用していない材料、部品などを使用していることもあり、それをどう直すかは工場スタッフの腕の見せ所です。

もう一つ、今回工場スタッフが驚き、感心していたのが椅子の構造です。
上記の写真のように非常にシンプルな部品構成になっています。

本来であれば、青線のような木材を入れ、肘を支えるパーツが欲しいところですが、これがないことで椅子がとても軽やかに見えます。

「こんな形できないよ」
「ここがデザインの肝だから、この形は絶対譲れない」
この椅子を眺めていると、そんな当時のスタッフたちのやり取りが聞こえてきそうです。

入手できない素材や不明瞭な部分については、工場スタッフのこれまでの経験と想像力を働かせながらの修理となりました。そのため、お客様にご満足いただけるのか、お届けするまでは不安な気持ちもありましたが、お届け後にお客様より嬉しいメールをいただきました。

「長年の風合いも感じさせつつ、家具がよみがえって大変うれしい」

このようなあたたかな言葉をいただけて、スタッフ一同とても安心しました。
ご依頼をいただいたきっかけといい、F様とのご縁を感じるお直しでした。

マルニ木工には今回の「No.82 スターチェア」のような隠れた名品があります。
ある人にとっては古くて不要な家具でも、ほかの方が見ると味わい深く魅力的に思う家具も多々あります。

対象商品(※)に限りますが、弊社修理工場ではそのような家具を引き取るサービスも実施しています。 
※写真のような昔のマルニ木工のロゴマークがついた家具が対象です。 

マルニ木工の修理工場が家具と人を結びつける、ハブのような役割を担うことができれば、と考えています。 

・家具の引取
 家具の引取|マルニファニシング (maruni-furnishing.com) 
 ※弊社グループ会社の株式会社マルニファニシングが窓口となります。
 
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